
トゥートゥオの命令により、アルルギア兵たちは、可能な限りの速さで決められた持ち場に向かい、或いはすでに配置されている持ち場で、敵を迎え撃つ心構えを構築する
しかし、既に戦いが始まっている西側を守る兵は、戦える兵数が大きく減じたヌゥッソの組の、戦力カバーを意識せざるを得なく、組の両翼に位置する三人班の緊張は限界まで高まっている
北西を受け持つ班長トゥリョスは、左右の仲間の体温も身じろぐ物音も、呼吸までも意識しながら、50ダートほど離れた場所で、守備に就いているヌゥッソたちの損害状況を計ろうと試みていた
その時、「敵だ!」右側のネグレイオスが、小さく警告音を発し、同時に左のダヨルも中槍を構え直すことで、出る微かな音で、班長に知らせようとする
次の瞬間、トゥリョス班を大量の矢が襲い、三人は一気に生か死かの戦いの中に放り込まれた
同時に、動ける者が二人になっているヌゥッソとザイドラにも、新たな敵が襲い掛かる。その騒音は、60ダートほど離れた南西箇所のガホルスたち三人班にも伝わり、すぐに指笛で村の南入口の守りを固めているナルレイ組に、危急を知らせる
微かに指笛を聴いたナルレイ組のカッハは、組長と他の仲間に西から敵が攻めてきたと伝え、組長ナルレイは、鋭く短い指笛を3回鳴らして、大小屋のトゥートゥオ隊長と1番隊長のガサに知らせ、同時に楯と中槍を構え直す
南側の守備体制は、こうして臨戦態勢を整えつつあった
村外周北側で、五人組のリーダーを臨時に任せられている2番隊隊長ドゥガは、こういう場所での戦いが嫌だった。元来冷静な性格のこの男は、広い平原に千を超える兵たちが整然と並んで、総大将の命令一下、前方に見えている敵に向かって、速足進軍でぶつかりに行く瞬間の、血のたぎりを好んでいた
自身と自軍の相関関係を把握して、どの角度で敵軍に衝突、或いは、回避してから捻り込んで、敵部隊の横腹を食い破る戦法を実戦する、はらわたの痺れるような興奮を愛していた
それに比べ、ヤミマ村への行軍時に起きた、林間からの敵襲を撃退戦を経て、この狭小な集落に到着できたのに、味方に多数死傷者を出し、さらに毒の入った井戸水で倒れる者まで出す状況に、正直うんざりしていた