2023年08月12日

黄金剣のジャミカル21 村長ダルジャルJ

ヤミマ村配置図.jpg

トゥートゥオの命令により、アルルギア兵たちは、可能な限りの速さで決められた持ち場に向かい、或いはすでに配置されている持ち場で、敵を迎え撃つ心構えを構築する
しかし、既に戦いが始まっている西側を守る兵は、戦える兵数が大きく減じたヌゥッソの組の、戦力カバーを意識せざるを得なく、組の両翼に位置する三人班の緊張は限界まで高まっている

北西を受け持つ班長トゥリョスは、左右の仲間の体温も身じろぐ物音も、呼吸までも意識しながら、50ダートほど離れた場所で、守備に就いているヌゥッソたちの損害状況を計ろうと試みていた
その時、「敵だ!」右側のネグレイオスが、小さく警告音を発し、同時に左のダヨルも中槍を構え直すことで、出る微かな音で、班長に知らせようとする

次の瞬間、トゥリョス班を大量の矢が襲い、三人は一気に生か死かの戦いの中に放り込まれた
同時に、動ける者が二人になっているヌゥッソとザイドラにも、新たな敵が襲い掛かる。その騒音は、60ダートほど離れた南西箇所のガホルスたち三人班にも伝わり、すぐに指笛で村の南入口の守りを固めているナルレイ組に、危急を知らせる

微かに指笛を聴いたナルレイ組のカッハは、組長と他の仲間に西から敵が攻めてきたと伝え、組長ナルレイは、鋭く短い指笛を3回鳴らして、大小屋のトゥートゥオ隊長と1番隊長のガサに知らせ、同時に楯と中槍を構え直す
南側の守備体制は、こうして臨戦態勢を整えつつあった

村外周北側で、五人組のリーダーを臨時に任せられている2番隊隊長ドゥガは、こういう場所での戦いが嫌だった。元来冷静な性格のこの男は、広い平原に千を超える兵たちが整然と並んで、総大将の命令一下、前方に見えている敵に向かって、速足進軍でぶつかりに行く瞬間の、血のたぎりを好んでいた

自身と自軍の相関関係を把握して、どの角度で敵軍に衝突、或いは、回避してから捻り込んで、敵部隊の横腹を食い破る戦法を実戦する、はらわたの痺れるような興奮を愛していた
それに比べ、ヤミマ村への行軍時に起きた、林間からの敵襲を撃退戦を経て、この狭小な集落に到着できたのに、味方に多数死傷者を出し、さらに毒の入った井戸水で倒れる者まで出す状況に、正直うんざりしていた
posted by 古代文明戦記もの at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ小説

2023年07月18日

黄金剣のジャミカル21 村長ダルジャルI

『敵の位置と持っている武器、人数、あと地形、できれば敵と味方の戦いの勢い、そういうことが頭に入ってると、大体勝てるぞ』野営のとき、勇士ジャミカルが、友達の視況師から聞いた言葉だと、話してくれたことが、そのときザイドラの頭に浮かんだ

なんにも分かってないのに、飛び出す俺には勝ち目がないのか、と一瞬頭に浮かんだが、振り回した中槍にがつんと確かな手応えと、ぐぇっと肺腑から押し出されたような敵のうめき声が聞こえ、そんなザイドラの頭の中のもやもやを吹き飛ばす

後は血が昇ったザイドラの頭は真っ白になり、ただひたすら暗闇の中を動く物音目がけ、樫の木の柄にアルルギアの鍛冶師が鍛えた穂先を備えた中槍を、体力の続く限り振り回し続ける

「ザイドラー、おーい、ザイドラー!」かすかに耳に入って来る声が、組長のヌゥッソのがなり声だと気が付いて、やっとザイドラは中槍を振り回すのを止めた
腕が石で出来てるみたいに重く、できたら槍を手放したかったが、堅く柄を握りしめている指はびくとも動かず、そばにやって来たヌゥッソが力を込めて、指を一本ずつ引き剥がさねばならなかった

「ここの敵はとりあえず片付いたようだ。もっともこっちも、組右翼一番のダイデルが殺られて、右翼二番のガムラが毒の矢を左腕に受けて、今、サイヨリムスが呪術師のおばばのところに、連れていったとこだ」組長は、ザイドラの指を剥がし終えると、次に備えるぞと言って、二人だけで西の守りに着いて短く指笛を吹く

西の守りの両側、西北と西南の守備隊は、ヌゥッソの隊がまだ全滅していないことを知り、なお一層木盾の持ち手を握り絞めて、中槍を構え直す
西北と西南の守備は五人で編成される“組”ではなく、三人で臨時に編成された“班”だった

現状は、負傷者と井戸水にやられて動けない三十一人を除くと、東西南北に配置された“組”とその中間を守る“班”で編成される、村の外回りを守る外周守備隊の三十二人、村の内側防備をする大小屋のトゥートゥオ配下の十五人、料理番と負傷者救護員の十人に、ジャミカルに同行の二人を加えたものが、全兵力だった

敵の兵力が全く分からない(こちらより多いのは間違いない)状況では、とにかく守備を固め、村の中に侵入させないことが第一だと踏んだトゥートゥオは、木盾を配りに行った五人隊(組)が、相継いで戻ったのを確認して、決戦用の戦闘隊形を再編成する

既に、北の小屋に出張っている2番隊隊長のドゥガと二人の兵士を除いた十二人を、自分と五人で大小屋を拠点にした遊撃隊とし、1番隊長のガサに五人の兵士を付け、南正面入り口の守備兵とした

同時に、救護兵のうちから四人と料理番補佐のトゥネリオに、毒が残っていても構わないから、井戸の水を樽や甕に出来るだけ多く用意し、敵兵の撃ち漏らしが火を点けに来たら、速やかに水をかけるよう命じた
posted by 古代文明戦記もの at 16:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ小説

2023年07月09日

黄金剣のジャミカル21 村長ダルジャルH

カルマイヤスが、木こり長の小屋に組隊士四名と一緒に着くと、追加の木盾のうち4個は出来上がっていて、新たに4個の木盾を四人の木こり衆が、厚手の板5枚を寄せて縁木を金釘で閉じているところだった
木こり長のキュリアスが、作業の進み具合を監督している様子だったので、カルマイヤスが「どうだ、俺たちが南の小屋に持っていく木盾は、そろそろ持って行けるのか」と尋ねる

「もう少し待って欲しい。そこの油皿の灯が尽きるまでには、この4個を足して8個渡せる」わかったと、カルマイヤスが返事しかけたそのとき、西の見張りの方角からピューピュー、ピューと敵襲ありの指笛が響いた
「すまん、敵襲だ。南の守りにどうしてもこれが要る」キュリアスに断りながら、組隊士に完成している4個を、トゥートゥオの居る大小屋の南側の小屋に運ぶよう、命じた
「待て、これと、これも仕上がってはいないが使うことはできる。持っていってくれ」キュリアスが、決意を漲らせた表情でカルマイヤスに、仕上げ段階に入っている木盾を指で示す

「わかった。助かる!」とだけ言って、出来上がっていた木盾の4個を身体の頑丈な隊士に2個ずつ持たせ、仕上がり寸前の木盾を自分と副組長が1個ずつ持ち、残った一番小柄な隊士を先頭に行かせ、警戒しながら村の南口に向かった
木盾は、ポロラの木材職人ダムジャが作ってくれた木盾より分厚く重いのだが、この大きさなら小屋の入口を塞ぐように立てれば、中に居る家族や仲間を守れるだろうと、カルマイヤスの組の全員がそう確信していた

その少し前、西側の守りを担っているザイドラは、敵接近の警報を発した後、さらに注意深く村を囲む森の黒い影に目を凝らしていた
ザイドラは帝都アトランティカ郊外の、牧羊の丘で羊飼いをしていたので、毎夜、眠っている羊を狙って忍び寄るオオカミの、密やかな襲撃を察知する独特の警戒能力があった
それは、音だけでもなく匂いだけでもない、夜の空気の濃淡の移動を感じる彼独自の皮膚感覚であった

ひたひたとまとわりついて来る感じに似ている、空気の密度の上昇がザイドラの不安を搔き立てる
「火だ!松明が幾つも見えるぞ!」散開している隊の左翼を守っているザイドラから、大分離れた先の右翼を守るダイデルが叫んだ。次の瞬間、空気を切り裂いて、暗闇の中から幾本もの矢が飛来、戦況の変化を伝えたダイデルが「うっ」とくぐもり声を漏らすと、人が倒れ込むドサッという音が続いた
「楯を構えろ!」5人組組長のヌゥッソが、矢に対しての守勢命令を発した

それからしばらく、放たれた矢が木盾に刺さるカツッという音が響く度に、そこに多量の矢が落ちて来るということの繰り返しが続いた
そのうち闇の中に目を凝らして敵の姿を求めていたザイドラは、つい視線が誘い込まれる遠くの松明の明りよりずっと手前で、小さな影が動いたような気がした

それまで、ザイドラの待機している場所には、1本の矢も飛んでは来なかった。つまり、自分は敵に発見されてはいないということだと思ったザイドラは、持っている木盾に腰の剣を差している帯紐をそっと解いて、持ち手に結わえ、紐を引っ張りながら、全く音を立てずに斜め前方に移動して、距離を取った処で紐を引く

バタリと木盾が倒れると、間髪を入れずに矢が何本も飛来し、倒れている木盾や地面にブスブスと突き刺さる
そのタイミングに合わせて、ザイドラは中槍を振り回しながら、小さな影の居た辺りに飛び込んだ
posted by 古代文明戦記もの at 16:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ小説

2023年06月25日

黄金剣のジャミカル21 村長ダルジャルG

「よぉーし!野郎どもー!配置に着けぇー!」トゥートゥオが吠える
ダムジャルとトゥートゥオが目で合図し合うと、隊長は屋外へ、村長は大小屋の中に別れた

実は、ジャミカルたちが村はずれの大木に向かった後、入れ替わりに木こり長のキュリアスが、大小屋で村の警備について話し込んでいた村長と武征隊隊長のところに、大事な話があるとやって来た
「きっと今夜、奴らは襲って来ると思う。井戸に毒を入れ、村が苦しんでいるときに、油と火で小屋を焼き払いに来る」それを心配していたんだ、と応える二人に「奴らは、まず毒を塗った矢で兵士を殺そうとするから、矢を防ぐ楯が必要だ」

「なに、楯だと!。木盾なら我々も装備しておるぞ」トゥートゥオが良く響く声を発すると、大小屋で休んでいたことで、大分体が動くようになった本隊兵士のトゥーラスが、足を引き摺りながら木盾を運んで来た
「おお、これは立派な楯だ。そうか、アルルギア兵は、もう木盾を装備しているのか」キュリアスが感心したというように、大きく頷きながら木盾を手に取り子細に眺める

「おお、これはポロラの市場で作らせたものだが、この村にも木の材は多いようだが、村人用に作れるだろうか、キュリアス殿」「これほどのものは、急には出来ぬが、重くはなるが似た物なら作れるぞ」
キュリアスは頷くと、見本にお借りしたいと言って、木盾を持って自分の工房のある小屋に戻って行った
隊長と村長は、キュリアスが用意する重い木盾は、小屋を守る軽い負傷兵や村人に与え、村を護る柵の外で備える兵は、木盾を持つ者中心に防御を固めることを取り決め、呪術師ロクサエルには矢毒を和らげる塗り薬を、できるだけ多く作ってくれるよう頼みの使いを出した

既に夕闇が迫り始めた中、ジャミカルたちは所定の物見場所に出向き、村に居る兵士や村人は、多少怪我をしていようが、毒水の影響が残っていようが、赤ん坊と重症者を除く全員が、村に迫る災厄に備えるため、無我夢中で働き続けている
そんな中、キュリアスが木こりと木材加工職人の仲間を集めた工房から、木盾の最初の10個が出来上がったという知らせが入り、トゥートゥオと1番隊隊長のガサが、走ることが出来る兵士五人にそれを取りに行き、小屋の入口を固めるよう伝えながら、まず1個ずつ北側の小屋から配るよう命じた

「これじゃあ全然足りんな。カルマイヤス、お前の組は今行った組に続いて木こり長の小屋に行き、なにがなんでも、あと5個は木盾を作ってもらい、この大小屋の周りの南側の小屋に木盾を配るんだ」カルマイヤスは黙って頷くと、組の四人に合図して、先に出た組の後を追いかける
posted by 古代文明戦記もの at 17:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ小説

2023年06月11日

黄金剣のジャミカル21 村長ダルジャルF

その一撃で、戦の局面が一気にジャミカルたちに傾いた
山の男たちは、山の神として畏怖している、巨大金毛熊の化身と見紛うようなジャミカルに恐怖し、踏み止まっていた地上の戦士も、先に逃げ始めていた樹上の弓兵も、算を乱しててんでにその場から逃げて行く
「ジャミカル、もうこの辺りの敵はいなくなったようだ。隊長たちの応援に行こう!」一番高い枝に陣取っているガムサルが大声で呼びかけて来た
「待て、タタリオの様子が変だ」ガムサルの声に被せるように、ドグラスの声が降って来る

やはり、さっきの頭上の異変は、タタリオになにかあった印だったのかと、ジャミカルは胸騒ぎを抑えられない
「タタリオ、どうした、やられたのか!?」ドグラスが下の枝に移ったらしく、呼びかけている
「ジャミカル、タタリオはどうやら毒矢に当ったみたいだ」続いて、下の枝で合流したらしいガムサルの声も聴こえる
地上にいるジャミカルには、頭上の詳細は分からないが、あの飛ぶ棒に毒が塗ってあったら厄介だと思った
「とにかく、出来るだけ早く村に連れて行って、あの“どろ”を使わないといかん」下から呼びかける声に、ガムサルとドグラスが「おお、わかった」と、声を揃えて応答する

小柄なタタリオを木登り上手なガムサルが背負い、大柄なドグラスが心配そうな表情で、ゆっくり降りて来る
ジャミカルが手を貸して、地面にタタリオを横たえ、仲間三人が周りに集まる
「体が熱くなってる」「息も早い」「タタリオ、返事できるか?」最後に問いかけたジャミカルの声に反応して、タタリオがやっと顔を上げて「腹が減った」と、弱弱しい声を出し、周りの皆の顔が一瞬ほころぶ
とにかく急いで村に戻ろうと、一番体力があるジャミカルがタタリオを背負い、ガムサルが先導し、ドグラスが後方を警戒しながら、降り始めた雨の中を、三人は走って村への道を急ぐ


それより少し前、村の西側で見張りをしている1番隊のザイドラが、指笛で敵の襲来を仲間四人と、自分たちの両側の四隅守りの六人に伝える
その知らせは、さらに各所の見張り隊に指笛で伝播され、大丸木小屋の外で眠っているトゥートゥオたちも、がばっと跳ね起き、武器を手に臨戦態勢に入る
小屋外の兵士の動く音に、大小屋から現れた村長が「隊長さん、夜襲かね?」と落ち着いた声で訊ねる
「どうやら来なすったらしい。我が隊(ウチ)の物見の合図があった」「隊長、村を大勢松明が囲んでますぜ」部下の報告が続く中、トゥートゥオとダルジャルが顔を見合わせ頷き合う
posted by 古代文明戦記もの at 17:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ小説

2023年05月30日

黄金剣のジャミカル21 村長ダルジャルE

この小さい奴らをどうしてやろうか、と一瞬思いを巡らせている間に、小男たちの姿が消えた
格別に鋭いジャミカルの眼でも、捉えられないほどの素早さで消え失せたのだ
これは油断ならん相手だと思考が動いた隙に、ジャミカルを新たな短槍の突きが襲い、立て続けに背後の木の陰からも、短槍の突きが繰り出される

頭上の枝に掴って、戦況を耳で把握していたタタリオが、ジャミカルの背後の敵を目で見つけて、警告を発しようとした刹那、頬をかすめて飛来した矢が、浅い切り傷を残して、木の幹に突き刺さった
ほんのかすり傷だと思ったが、じきにそれは間違いだと気付く。傷を負った頬が焼けるように痛み始めていた
頭上の仲間の身に起きた異変に気付いたジャミカルは、それがあの飛ぶ棒の攻撃を意味していると悟る

大分以前「同時に複数の敵から攻撃を受けたらどうする」と、盟友であり視況司でもあるバリスタスに訊かれたことがあった。その時、ジャミカルは「構わん、皆弾き返して、手近な敵から切り伏せていくまでだ」と答え、友は笑いながら「お主ならそれもよし、だな」と評したものだった
もう、考えるのはやめだと決めたジャミカルに、矢が何本も降り注いで来たが、それらはことごとく無意識に振り回す長剣に払い落とされ、彼の足もとに散らばって落ちるだけだった

枝の一番高いところに停まっているガムサルは、自身の持っている短弓に矢をつがえると、ひゅっと斜め下の葉陰に潜む敵を射る
思いがけず、自分たちより高い位置から降って来た矢に当った男は、首筋を射ぬかれて声も上げずに、隠れている枝から滑り落ちる

暗闇の中で戦っているジャミカルの耳にも、頭上から重さのあるものが枝をへし折りながら、落ちて来るのがわかった。それは同じく、この巨人を相手に苦戦している、山の部族の戦士にも伝わり、彼らの戦意を少しく挫くことになったのは、変わらず繰り出してくる短槍の突きの勢いが落ちたことから知れる

戦いの場の空気はますます湿気を強め、降雨が近いことを告げている
この分なら火による攻撃の脅威が、少しは低下するだろうとジャミカルは考え、自分たちへの攻撃だけに対処すればよさそうだと、僅かに心の緊張が緩む

そのとき「火だ!」と、頭上からドグラスの声が降って来た
大木の根元で戦っているジャミカルには、火の明りも臭いも届いてはいないが、切迫した声音に敵も味方も、一気に戦意が高まった
ダムアリから見える光景は、黒々とした森の繁みが途切れ、それよりほんの僅かに明るい空に、シルエットを浮かばせているヤミマ村の集落目掛けて、森裾からひたひたと迫る20以上の松明の群れだった

眼の良いドグラスが「隊長たちが動き出しておる!」と、戦況をこの大木に陣取っている仲間に伝える
その声に、ジャミカルの緊迫が解け、改めて周囲の敵に神経を集中することが可能になった
ダムアリの放った矢がまた一人の敵を、射落とし、どうやら敵の弓兵たちは退散することにしたようで、頭上から木の葉や枝が擦れる音が乱れ聴こえてくる
同時に、ジャミカルを執拗に襲っている短槍の矛先が鈍り、五人いる敵のうち、三人が逃げ出す頃合いを計っている気配が読み取れる

それでも、まだ戦意盛んな正面の敵に、今度はジャミカルから大きく切り込んでおいて、その瞬間を狙って飛び出して来た背後の敵の胴を、素早く身を翻して長剣を鋭く振う
ぐぇっというような音を漏らして、胴を真っ二つに切り払われた敵が前のめりに転げ込んだときには、ジャミカルの姿はそこに無く、さらに大きく踏み込んで、正面の敵に長剣の刃が振り下ろしている
正面の敵は、短槍を横に構えて、己が頭上に降ってくる刃を受けようとしたが、その短槍の柄を苦も無く切断して振り下ろされた長剣が、何枚も鞣革を重ねた兜ごと頭蓋を断ち割って、山の男の息の根を止めた
posted by 古代文明戦記もの at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログ小説
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