2022年07月25日

黄金剣のジャミカル20 女戦士ダムアリG

その言葉に河魚漁師の一人が「おう、親父さん、今、こいつがなんてほざいたか、聞いたかよ。俺ぁ許せねえぞ、こいつら叩きのめして河に放り込んじまおうぜ!そうすりゃあ、河のでかい魚に逢うことが出来るってもんだ」と吠えた

一旦は収まりかかってた周りの連中も、勢いづいて「そうだ」「そうだ」と呼応する
その声に推されてついさっきは、今回のことを無かったことにしかけていたドンバギも、「俺も許さんぞぉ!」と怒声を上げた

やれやれと思って、その場に出て行こうとしたジャミカルだったが、その前に赤毛の女戦士が、馬鹿な二人と市場の連中の間に飛び込み、「だから、こんな酒飲みは放っておけ、って言ってんだろっ!」と叫んだ

「女が、こんなところに出て来るなよ!」「そうだそうだ、しゃしゃり出てくるんじゃないぞぉ!」と、男どもが罵声を浴びせ、あろうことか市場の女たちまで「あんた出しゃばりなんだよ!」とか「いい女ぶるんじゃないよっ!」などと、非難の声を浴びせる始末だ

ダムアリが、言い返そうとして息を吸い込んだ瞬間、「まあみんな、待てよ」と深く穏やかな声が響いた
一瞬、皆の動きが止ったところへ、身長2ダート(約2m)にもなろうという金色の瞳と金色の髪の大男が、ゆっくり現れたものだから、特に小柄な者が多い山の民たちは驚いた

その姿が、山の神と河の神の声を聴かせてくれる呪文祭礼師が語ってくれる、神の山“アガラティマウス”と慈しみの大河の女神“ナトシャス”の息子、金色の“アルルティウス”そのもののように見えたのだ

驚いたと言えば、ダムアリも突然現れたジャミカルを見て驚いた、と言うよりかぁーっとなったが正しい
「ジャミカル、貴方がここに居たなんて…」それを聴いて市場の者は、その大男が“アルルティウス”ではないことに気が付いた

「なんだ、こいつも海の方の奴か」「体はでかいが人だ!」と口々に言い合い、一度挫けかかった勢いを取り戻しつつあった
「そりゃそうだよ、俺は人間だよ、あんたらと同じ人間さ。だけど、俺もここの二人も、あんたらとは違うところがある。兵士なんだ、アルルギアの」

その言葉に、市場の者全員が怖気づいた
「兵士を叩きのめすと、軍隊が大勢仕返しに来るぞ!」「そうだ、兵士は仲間が大勢いるから、必ず仕返しに来る!」その声に負けないよう「兵士がなんだ。臆病風に吹かれるな!」と、反発する声も少なからずある

「そうだよ、俺たちアルルギアの兵士は、皆、この市場が大好きだ!こいつらだって、好きで堪らないから、酒場で猿酒をしこたま飲んだんだ」「そうだよね、この二人はウチの酒場で、浴びるほど猿酒を飲んでたよ」
「そうだよ、兵隊は市場で、よく物と海塩や砂金を交換してくれてるわ」女たちの声が、少し優しくなった

「そうか、こいつらは河の魚の大きさが分からなくなるくらい、大酒したんだ」「まあ、いつも気のいい連中だよ」「そうだな」男たちも口々に兵士の良いところを褒め、この場を丸く収めたくなっている

「よ〜し、それじゃ、これでもう終わりだ。兄さん方、気を付けて帰ってくれよ」ドンバギが場を締め括って、集まった野次馬たちもぞろぞろ帰り始める

ダムアリは、ジャミカルがひと暴れすれば、この場に集まった連中など目じゃないのに、穏やかに収めたのに感心し、この若い大男のことをもっと好きになった

ところで、ジャミカルと言えば、酔っ払っている二人を両の小脇に抱え、野営地に向かって歩き始めたところで、ダムアリもマジャリスとカウネイスの落し物を拾い集めて、ジャミカルの後を追って行った

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2022年07月11日

黄金剣のジャミカル20 女戦士ダムアリF

カウネイスもマジャリスも、ガンドアルギ市場名物の猿酒屋で、しこたま猿酒を飲んでいたから気が大きくなっている

「やろうってのか、おめぇら!」と、カウネイスが毒気を吐くと、いつもなら場の様子を見て、周り中が敵になりそうな状況は回避するよう、上手く仲間をなだめるマジャリスが「よ〜せ、よせ、弱い者いじめなんてやめろよ、カウネイスよぉ」と、騒ぎを大きくするように煽っている

確かに二人は、危うい状況に陥っていた
気が付いていない間に、周りは河魚屋の逞しい男たちが、手に魚突き銛や捌き包丁を持って取り囲み、その諍いを見物する野次馬たちが、その周りに大勢集まっていた

二人を迎えに行ったジャミカルは、100ダート(100m弱)程先に、人が集まっているのは視認していたが、よもやカウネイスとマジャリスが、その集団の真中にいるとは気付かず、迂回して行こうかと考えていた
その時「なに大勢集まってんだいっ!」…聞いた声が人ごみの向こうから聞こえてきた

おやっダムアリの声だ。と思ったジャミカルは歩みを速めて、人ごみに近寄って行った
背が高いジャミカルならではで、人の群れの中心にカウネイスとマジャリスと、人垣をかき分けて二人に近寄りつつあるダムアリの姿も見て取れた

「ダムアリさんか。こいつらが俺らの商売にけちをつけやがるんで、皆でちょっとしめてやるとこなんだよ」河魚屋の親父ドンバギが口から唾を飛ばして返答をした
「そいつぁいけないねぇ。なんだ、この二人、酔っ払ってるじゃないか。ドンバギさん、わざわざ教えてやっても酔ってるからすぐ忘れちまうよ。放っときゃいいんだよ、こんなの」ダムアリが上手くなだめる

「おう、そうか。だがよ、こいつら海の方から来たって言ってたから、きっとアルルギアの連中だ。こいつら、いつも俺らを見下してるから、この際、少し懲らしめた方がいいって思うんだ」周りの連中も「そうだ」「そうだ」と声を合わせ始めた
さて、あのダムアリだったら、この場はどう治めるんだろうと、ジャミカルはそこに興味を持ったので、もう少し様子を見ていることにした。いざとなったら、ここの連中くらいは俺一人で相手できるし、とも思った

「なんだなんだい、河魚漁師のお兄さん方ともあろう者が。こんなふらふらの酔っ払い相手に。大勢で取り囲んで袋叩きにでもしたら、山の仲間の名折れになるよっ」
あくまで、この諍いを治めようという気持ちが、前面に出たダムアリの勢いは、このガンドアルギ市場に集まる者には、知らない者はいないから、男どもも女どももなんとなくたじたじとなり
「まあ、そんなもの見てたって仕方ないしね」とか「もう許してやんなよ」などと、小声があちこちから湧き出してきた

そうなると、ドンバギも引くきっかけを得ようと「まあ、河も海もでかいのがいるってことだ。分かってくれよな、お二人さんよ」と、一言放って、場を引こうとする

が、折角の仲裁を有難いとも思わず「なに言ってやがる、海の方がでかい魚が獲れるってぇのは、子どもでも知ってることさ」と、よせばいいのにカウネイスが憎まれ口を叩いた
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2022年06月25日

黄金剣のジャミカル20 女戦士ダムアリE

「店は…店なら、大丈夫に決まってるじゃねえか!」威勢よく応えたが、声の最後の方に、少し不安の色が差した。ダムアリが自分より早く店に戻ったら、店番していなかったのが丸わかりだということに、気付いたのだ

「じゃ、じゃあ、俺はもう行くぜ。またいつか会ったら、そんときゃよろしく頼むわ」言うなり、素早く駆け出す
「ほぉー、あいつも足が速いのぉ。もうあんなとこまで行っとるぞ」トゥートゥオが感心している。確かに、ダムアリも速いが、あの男も足が速いと、自身も足の速さが自慢のジャミカルも驚いていた

それから市場を廻って、主に果物や獣肉や芋などと海塩を交換して、力自慢のトゥートゥオとジャミカルが、大荷物を背負い、隊の野営地に着いたのは、辺りを薄闇が覆い始める頃だった

隊の半数は、トゥートゥオとジャミカルと一緒に市場に行ったのだが、板屋でどれだけ時間が掛かるか分からなかったので、1日目に半数を羽を伸ばさせ、2日目は残り半数が市場に行っていたのだが、二人が大荷物を持って合流したときには、もうほぼ全員が帰っていた

「ほーら、獲れたての肉にもぎたての果物と芋だ。ポルポロよぉ、これで旨いもん、よろしく頼むぜ」トゥートゥオが、上機嫌な大声を出すと、太った身体をゆらして、料理親方のポルポロが料理補助のトゥネリオを呼んで、にまにましながら、二人で肉や果物を吟味し始める

「どうだ、俺たちが留守の間、こっちで変わったことはなかったか」相変わらず大声で皆に尋ねたトゥートゥオに、副長のガサが「別になんにもありやせんよ」と答えた。が、もう一人の副長ドゥガが「まだ二人戻ってないぞ」と追いかけるように言葉を足す

「誰がいないんだ」「マジャリスとカウネイスだよ」「そうそうカウネイスがマジャリスと一緒だったぞ」
「まあ、市場で珍しいもん見て、夢中になってるんじゃないのかなぁ、あいつら」皆が口々に喋り出す

「俺が見て来ます」一言だけ告げて、ジャミカルは剣だけ携えると、もう走り出した
「遅くなったら飯、無くなってても知らんぞー」トゥートゥオが大声で注意した

走りながら、ジャミカルはカウネイスはともかく、いつも慎重で、頭のまわるマジャリスが、陽が暮れかかっているのに野営地に戻っていないということは、なにか揉め事に巻き込まれているのでは、と考えていた


それより大分前、まだ陽は傾き始めたかどうかという頃、マジャリスとカウネイスは、河の魚を並べて客に見せている、毛深い男たちの店前に居た

「なかなか大きな魚だなぁ。なんていう魚なんだい」カウネイスが顎の髭を捻くりながら、河魚屋に尋ねる
「ナマズだ。どうだ兄さん、でかいだろ。こんな立派な奴、これまで見たことあるかい」顔中黒ひげの大男の店主らしき男が、大ナマズを手で指し示して、自慢げに笑う

「そうかぁ、これナマズって言うのかぁ。ここいらの河は小さいから、こんなのが立派に見えるんだ」カウネイスが笑いながら言う
「なんだとぉ、これが大きくないんだってぇ!兄さん、あんたの眼は節穴よりひどいな」黒ひげの大男が、大声で二人をなじり、手下らしい男が、出刃包丁を握りしめて仁王立ちになる

「ああ、俺たちゃ海の近くから来たんで、こんな小さな魚なんて、初めて見たんだ。なあ兄弟」傍らのマジャリスに話しかけるカウネイスは、まるでびびってはいない

「おいおい、よせよせ、こんなところで海の魚の話しなんかしたって、分かりっこないんだから」場を鎮めようとしているのか、煽っているのかわからないマジャリスに、河魚屋の全員が殺気立つ
posted by 古代文明戦記もの at 21:24| Comment(0) | ブログ小説

2022年06月12日

黄金剣のジャミカル20 女戦士ダムアリD

「ふ〜ん、この板の上に、あたしの牛革を張ってもっと丈夫にするんだ」ダムアリが“タテ”の表面の板を手で撫でて、呟いた
「いいだろ、重さの割には丈夫になるはずだ」ジャミカルがにっこり白い歯を見せて、ダムアリとトゥートゥオの顔を代わる代わる見て満足そうに笑う。ダムジャも嬉しそうに笑う

「それで、こいつはいつまでに揃うんだ」トゥートゥオがジャミカルとダムジャに問うた
「そんなに早く出来っこないよ」ダムアリがトゥートゥオを宥めるように、ダムジャの代りに答え、ダムジャは大きく頷いてダムアリに笑いかけた

「それじゃ、俺たちはこれ、タテって言ったか、タテ無しで森に行かなきゃならねぇんだな」トゥートゥオがちょっとがっかりした様子で、言葉を吐き出した
「そうだ、お前らの帰って来る頃には揃えておくさ」うんうんと大きく頷きながらダムジャが笑顔で約束する

「そうか、分かった、これは都に凱旋するときの土産って訳だな。せいぜい、あの棒に出くわさないよう、火の山“アガラティマウス”のご加護を祈ることにしようぜ」トゥートゥオが隊長らしく話をまとめ、この件はここまでとした

板屋を出て数百歩歩いた辺りで、トゥートゥオがダムアリに話しかける
「俺たちゃここからヤミマ村に向かうんだが、お前は、どうする?」トゥートゥオの頭の中では、もうダムアリは仲間同然の存在になっているようだ

「う〜ん、そうだな、あたしもロロミオの山に帰るんだけど、ヤマミとは少し方角が違うなぁ…」ダムアリが赤髪の頭に指を立てて、もしゃもしゃ掻き乱しながら独り言をぶつぶつ漏らす

その様を眺めて、ジャミカルはこいつも可愛らしいところがあるんだな、と思う心が浮かんだことに我ながら驚いていた

「決めた。あたしは一旦店に戻って、店番させてるガムサルに海塩袋と、革の残りを持ってロロミオに帰るように言いつけてから、ヤマミに向けてのろのろ歩いてるお前らに追いつくようにする」それだけ言うと、にかっと笑みをこぼしてダムアリはさっさと革屋を目指して走り去った

「なんて足の速い女子だ。もうあんなに小さくなってやがる」トゥートゥオが心底あきれた、という風に言うと、にやっと笑ってジャミカルの顔を見た

どうしてか、そんなトゥートゥオに見られて恥ずかしいみたいな気持ちが湧いてきて、ジャミカルはぷいっと他所に目をやった。と、その視線の先に、どう見てもロロミオ族の男にしか見えない、額に青い刺青を入れた若い男が樹の陰に隠れたのが見えた

「おいっお前!なぜ俺たちを盗み見てた!」ジャミカルは、声を発すると同時に、樹の陰に隠れた男のところに素早く駆け寄り、長い手を伸ばして、むずと男の襟首を捕まえた

「や、やめてくれよ、俺は、お前らになんにもしちゃいないじゃないかぁ…」大男のジャミカルに首根っこを摑まえられて、若い男が情けない声を出した

「ほほう、お前の刺青を見ると、ロロミオ族だと名乗っておるのが分かるな。ジャミカル、そいつはあのダムアリの仲間だぜ。放してやんな」トゥートゥオが言う言葉を聞いてジャミカルは、すぐに手を離す

「痛えなあ、とんだ馬鹿力だぜ、このでかぶつは」声色は情けないが、言ってる言葉はあくまで強気な若い男は、首筋をさすりながら文句を垂れている

「おい、お前、ダムアリの言ってたガムサルって奴だな。どうだ、そうだろ」にやにやしながら、トゥートゥオが決めつけるように言う

「そうだよ、俺はロロミオの鹿獲り名人のガムサル様だ」背は1.7ダート(169p)に届かないくらい、黒髪に団子鼻の愛嬌のあるニキビ面の若い男は、悪びれる様子もなく名を名乗った

「ははぁ、お前、ダムアリ姉ちゃんのことが気になって、こっそり俺たちを見張ってたんだな」ますますにやにや顔になって、トゥートゥオがガムサルを茶化す

「お前、革屋の店は放っておいていいのか?」ジャミカルが、ちょっと心配そうな声音になってそう訊ねた
posted by 古代文明戦記もの at 16:15| Comment(0) | ブログ小説

2022年06月03日

黄金剣のジャミカル20 女戦士ダムアリC

板屋に着くと、腰に手を当てて立っているダムジャの後姿があった
「おーいダムジャ。どーだ出来たのかー?」トゥートゥオが怒鳴っているみたいな大声で声をかける

「ふん。トゥートゥオか。こいつを見てみな」例の甲高い声でダムジャが答える
「ふ〜ん。こんな物頼んだのかい。一体、なんに使うんだよ、こんな物」両手を挙げ、ダムアリはあきれ声を出す

「いや、いいかも知れんぞ、こいつは。ちゃんと俺が思う形になってる」ジャミカルは、板屋の造った物に手を 伸ばした
「どうだ。お前が言っていたような物になってるか?」ダムジャが腕を胸の前で組み、得意半分不安半分といった表情を浮かべて、仁王立ちしている

その物は、握りこぶしほどの幅(約10cm)、長さはジャミカルの背丈の2/3(約140p)ほどで板厚1.5ダテ(約1.5p)ほどの板を7枚縦に並べ、その上端と下端に左右の幅一杯に板を渡して、釘留めしてある
更に、真中辺りにも5ダテ(約5p)角の棒が二本、12ダテほどの間を空けて並べて釘留めされ、その間を分厚な牛革のベルトが渡されて釘留めされている

ふ〜ん、と言うとジャミカルは手を伸ばして、むずと左手で革ベルトを掴んで、軽々と持ち上げて
「これの表に牛革を貼るんだ…ならば、もう少し重くなるんだな」
「どれ、俺にも持たせてみろ」言うと、トゥートゥオが手を伸ばして、ジャミカルからその物を受取り、軽く上下させて重さを確かめる

「これで、あの棒を防ぐって訳か」トゥートゥオが感心したように頷いて、その物をしげしげと眺めた
「あたしにも持たせておくれ」ダムアリが、横から手を伸ばす
1.8ダートあるトゥートゥオと遜色ない背丈のダムアリだったが、さすがに腕力はやや劣っているのか、その物の重さに顔をしかめる

「あんたみたいにでかくて強い男なら、これでも楽々持てるだろうけど、もう少し小さな男だったら、これを持って戦うのは大変じゃないのかねぇ」呟くように感想を漏らすダムアリに、ジャミカルが感心したように頷きながら「そうか、そうだな、きっとピュニアやタムタオだったら、長く行軍させるとへばっちまうかもな」
背丈はジャミカルに劣るが、筋肉量では負けていないトゥートゥオも、大きく頷く

「安心しな。小兵用に、もう少し小さなのを作る積りだよ」本当にそう思っていたのかは定かではなかったが、いかにも任せとけというように、ダムジャが大きく胸を張る
「しかし、言っとくがな、お前たちの考えで出来たこいつに、なんか名前を付けてやれ。名前のある道具は、必ず人のために役立ってくれるんだ」ダムジャが言葉を継いで、ジャミカルを見やった

「おおそうだ。ジャミカル、お前この道具の名付け親になれ。なんってったって、こいつはお前が先に思いついたんだからな」トゥートゥオも、うんうんと大きく頷いてジャミカルを見やる

「そうだな、こいつは下に置いてあったらテーブルと似てるが、使うときはこうして必ず立てて使う。だから、タテでどうだ」こういうときに、バリスタスが居たら、もっといい名を思いつくんだろうに…と思いながらジャミカルが宣言して、この問題は片付いた
posted by 古代文明戦記もの at 14:56| Comment(0) | ブログ小説

2022年05月12日

黄金剣のジャミカル20 女戦士ダムアリB

「店は、あいつに任せておいていいのか」店を後にして、荷物を背負って一緒に板屋まで行ってくれるというダムアリに、トゥートゥオが心配顔で話しかけた
「いいよ。あいつはあたしに負けた男だから、あたしに損かけることなんてできないさ」そんなトゥートゥオに、さばさばした顔で答えるダムアリ

「お前の肩に停まってるそいつは、なんていうんだ」ジャミカルが、背中をゆすって牛革の束の収まりを直しながらダムアリに話しかける
「チュクチュクって名を付けてある。森に居る精霊さ」ダムアリは今度は微笑んで、ジャミカルに答える

「チュクチュクか、名前も可愛いんだな」ジャミカルも微笑み返す。三人は、それぞれ背負った重い荷物を、さほど気にもせぬ様子で、トゥートゥオを先頭に、すたすた歩いて行く
「おおっと、今日は奴さん留守かな」先に立って荷を運んでいるトゥートゥオが、立ち止まって呟いた

長いもの短いもの、その中間の長さのもの、そして薄いもの厚いもの、その中間の厚さの板が、一握り半ほどの太さの皮を剥いた丸木でできた、枠組みだけの小屋のような店に、きちんとサイズ分けされた状態で並んで立てかけられている

ジャミカルは並んでいる板の表面を掌で撫でて、その出来映えに感心した唸り声を出した
「なにやってんだ、お前ら」不意に甲高い声がしたので振り向くと、額から頭頂が禿げ上がった筋肉質の小男が棍棒を掴んで突っ立っている

「おおっ、ダムジャ、帰ったか」トゥートゥオが笑ってそう話しかけると、小男の相好が崩れて親しみのある顔に変わる
「なんだトゥートゥオじゃないか。久しぶりだな、何年ぶりだ」男にしては高い声だが、力のこもった声だ

「今日はな、あんたに頼みたい事があって寄らせてもらったのよ」1.8ダートあるトゥートゥオが、1.5ダートくらいしかないダムジャを、抱え込むようにして親しげに喋る様を見て、ジャミカルもダムアリも笑顔になる

「それで、その板を寄せたものに、この牛革を貼るのか。飛んで来る刺さる棒を、防ぎたいんだな。だったら、裏側に手で持ちやすいなにかを付けるといいな」トゥートゥオとジャミカルから注文内容を聞きながら、ダムジャはぶつぶつ言いながら、地面に細い棒で図面のようなものを描いていく

その日は、ジャミカルとトゥートゥオは旅籠に帰り、ダムアリはふて腐れながら同郷のロロミオ族の野営地に帰った(どうしても一緒に行きたいと言うダムアリを、男ばかりいる旅籠には連れて行けぬと、トゥートゥオが一生懸命説得した)

次の日の昼過ぎ、ジャミカルとトゥートゥオが、ダムジャの板屋に行こうとして旅籠を出ると、ふらりとダムアリが現れた
「これから、昨日のちびの店に行くんだね。あたしも行くからね」ジャミカルとトゥートゥオが顔を見合わせて笑うと、ダムアリがはにかんで微笑んだ

「いいなぁ、色男」トゥートゥオがからかうと、ジャミカルは真顔になって「なんで、お前も行くんだ」と問い詰める
「あたしは、あんたの子が欲しいんだよ」ダムアリも真顔になって言い返す

「だから言っただろ、女はまだ要らないんだ」とジャミカル
「あたしは、あんたの連れ合いになりたいなんて言ってないよ!とにかく、あたしより大きくて強い男と契りたいだけなんだよ!」真剣な顔でそう言うダムアリの肩に停まっているチュクチュクが、主人の感情を映して尖った歯をむき出して威嚇する

「わかったわかった、その小さい奴がこれ以上怒るのは見たくないから、一緒に板屋に行くんなら行こう」
「そうだそうだ、男と女は仲良くしなきゃならないんだ。一緒に居たいだけ居りゃあいいのさ」トゥートゥオが笑いながら言うと、さっさとダムジャの板屋に向かって歩き始めた
posted by 古代文明戦記もの at 18:49| Comment(0) | ブログ小説
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